「一緒に暮らす同性のパートナーに財産をのこしたい」というご相談者様の事例です。
 
【相談者】Aさん(58歳)東京都在住・女性
 
【背 景】
Aさんには、10年前から一緒に暮らす同性のパートナーBさん(53歳)がいます。この先もずっと彼女と一緒に暮らしていきたいと考えています。
 
世間的、法律的には二人とも独身で、それぞれに兄弟姉妹がいます。
 
Aさんは、自分が死亡した場合、自分の財産すべて(自宅マンション・預貯金)をBさんにのこしたいと考えています。
 
自分に万が一のことがある前に、対策をしておきたいということでご相談にいらっしゃいました。

事前の対策の重要性について

日本では同性婚は認められていません。

同性と一緒に暮らしている方のために、東京都渋谷区などの一部の自治体でパートナーシップ制度というものを設けて、一定の基準を満たす同性カップルについて、パートナーであることの証明を発行してもらうことができます。
 
しかし、これによって法律上の配偶者となることができるわけではないので、何らかの対策をしないままですと残念ながら財産を承継させることはできません。
 
たとえば、パートナーと一緒に暮らすために、自分名義でマンションを買うとします。
 
万が一名義人である本人が死亡するとその自宅マンションは、法律で定められた名義人本人の相続人のものとなります。
 
その相続人に退去を求められる可能性もあり、配偶者に認められる居住権もありません。
 
したがって、同性のパートナーに自分の財産をのこすためには、生前に何らかの対策をしておく必要があるのです! 
 
そこで今回は、同性パートナーに財産をのこす4つの方法をお伝えします。

① 遺言をのこす方法
 
遺言書を作成することでパートナーに財産をのこすことができます。
 
この時に気をつけたいのが、仮に遺言書を作成する方に子や両親がいるような場合には、財産の全てを同性のパートナーに相続させると遺留分侵害額請求を受ける恐れがあります。
 
遺留分というは、法律で定められた相続人に認められている相続遺産の最低限の取り分です。遺留分が認められているのは、配偶者、子、父母、祖父母です。
 
そのため、遺留分を侵害しない遺言をする、遺留分侵害額請求権に対応できる現金を用意するなどの対応を取るようにしましょう。
 
ただし、今回のAさんの場合は、ご両親はすでに他界しており、兄と姉がいますが、兄弟姉妹には遺留分はないので、問題はありません。

② 死因贈与契約をする方法
 
死因贈与契約というのは、死亡したことを条件として贈与をする契約です。
 
遺言とは異なり、契約ですが、亡くなった際に財産が移転する点では変わりません。
 
ただし、死因贈与契約も遺言と同じく遺留分侵害額請求の対象になります。
 
 
その③ 養子縁組をする方法

養子縁組とは、血縁関係にない人同士が法律上の親子関係を結ぶための制度です。
 
パートナーと養子縁組をすることで全財産をパートナーに相続させることができます。
 
最もシンプルで効果的な方法ですが、パートナー関係ではなく親子関係とみなされるため、お互いの気持ちとは違う形になってしまうのではないでしょうか。。。

④ 親愛信託を使う方法
 
自宅や会社など大切な財産を信託財産にすることでパートナーにのこすことができます。
 
当初は委託者と受託者と受益者を自分に、第二受託者をパートナーに、受益権の一部をパートナーにします。
 
すなわち自己信託宣言で親愛信託をスタートさせておきます。
 
自分が生きている間は、その信託した財産はこれまで通り活用できます。
 
自分が死亡した場合、受託者がパートナーに代わり、自分の受益権もパートナーが引き継ぐように設定しておき、パートナーが受益権のすべてを持つようにしておきます。(←これで、すべての信託財産をパートナーが引き継ぐことになります)
 
信託財産としなかった部分は、民法にしたがい法定相続人による相続が行われます。
 
万が一、パートナーが亡くなった後も財産がのこっていれば、最終的に自分の身内の財産になるようにしておくことも可能です。

このように親愛信託を活用することで、大切なパートナーに財産をのこすことが可能になるのです!

法律がまだ追いついていない今の日本では、同性のパートナーに財産をのこすには、事前の対策が欠かせません。
遺言や契約だけでは不安が残る中、親愛信託は“想い”をかたちにできる、非常に柔軟で安心な仕組みです。

誰に財産を託し、どう使ってもらい、誰に承継してほしいか —— そのすべてを自分の意思で決められるからこそ、大切な人との未来を守ることができます。

制度に頼るだけでなく、自分の人生を自分で設計する。そんな選択肢として、親愛信託をぜひ知っておいてください。