信託は、①信託契約を締結したとき、②遺言信託をした人が亡くなったとき、③自己信託宣言が効力を発生した時に始まり、④信託法で定められた事由や⑤「別段の定め」と呼ばれる、個別に定めた事由が生じた場合に終了します。
① 信託契約を締結したとき
自分の財産をどのように管理して、誰に継承させてどのように終わらせるかという内容を決めて、その内容を信頼できる人との間で親愛信託契約を結ぶと信託がスタートします。
そして、信託された財産ごとに名義を託された人(受託者)に変更する手続きをします。
そのあとは、名義人となった受託者が受益者のためにその信託財産の管理等を行っていきます。
② 遺言で信託をスタートさせる
信託する内容を遺言書に書いて、自分が亡くなったあとにスタートさせるという方法もあります。
ただ、自分が亡くなったあとにスタートするので、自分の想いが叶えられているかを自分の目で確認することができません。
③ 自己信託宣言
自分の財産を信託財産として、自分が受託者となって管理することを「自己信託」と言います。
「委託者=受託者」となるため「信託契約」ではなく「信託宣言」をして、公正証書を作成するか、受益者となるべき者と指定された第三者に対して、確定日付のある証書により信託されたこととその内容を通知したときに効力が発生します。
公正証書ではなく受益者が2人以上いる場合に自分以外の受益者に通知する方法でスタートする場合にはその内容を記載・記録した書面や電磁的記録(データ)で作成する必要があります。
④ 信託法で決まっている信託が終了する事由
※ここでは代表的なものをお伝えします。
- 信託の目的を達成したとき
- 信託の目的を達成できなくなったとき
- 受託者が受益権の全部を持った状態が1年間継続したとき
- 受託者がいなくなり、新受託者が就任しない状態が1年間続いたとき
- 委託者と受益者の合意があったとき
など
⑤ 信託契約書(遺言信託・自己信託宣言)に書くことで定めることができる終了事由
- 受益者(または受益者代理人)と受託者の合意
- 最初の委託者(兼受益者)の死亡
- 信託不動産を売却したとき
など
※定めないことも、他の終了事由を定めることも可能です。
今回は、信託のスタートと終了についてお伝えしました。
どんな目的を達成したいのかによって、スタートの方法は変わります。
まだ信託を継続したいのに、信託法で定められている終了事由に当てはまりそうになった場合には、信託契約の内容を見直したり、自己信託から信託契約に変更したりすることで信託を継続させることも可能な場合があります。
信託のスタートと終了には、法的なルールと柔軟な選択肢の両方が存在します。
目的に応じて最適なスタート方法を選び、終了事由についても事前にしっかりと設計しておくことで、信託を安心して運用することができます。
信託の継続を望む場合には、契約内容の見直しや形式の変更によって対応できる可能性もあるため、定期的な確認と専門家への相談が大切です。
