残余財産とは、信託契約が終了したときに余っている財産のことであり、残余財産帰属権利者とは、その余っている財産を受け取る権利を持つ人のことです。
たとえば、以前に投稿した「認知症の妻に財産をのこしたい」の事例のような老夫婦がいて、認知症の妻が亡くなったあとに、信託契約は終了し、残った財産を長男、長女に分けて承継するように指定しておきます。
妻の死亡で信託契約が終了すると残余財産の行く先は、残余財産帰属権利者である長男と長女となります。
信託が終了したときの財産の行く先
信託財産にしていた財産がなくなってしまったときには、信託は終了します。
信託財産は残っているけれども信託が終了したときに、その残っている財産(残余財産)は信託財産ではなくなり、所有権財産に戻ります。
通常、信託契約の中で残余財産帰属権利者を定めることになります。
個々の残余財産(例えば、自宅やアパート、金銭など)について、自宅は長男に、アパートは長女に・・・といったように財産ごとに自由に受取人を指定しておくことができます。
信託の終了
信託の終了は、終了といってもいきなり終わるわけでなく、清算という手続きを取らなくてはなりません。
信託財産に対して、取引の相手がいる場合にはそのやり取りを終わらせてから帰属権利者に権利がいくことになります。
会社を解散するときにいきなり解散できるわけでなく、清算の手続きをしてから会社が解散するのと同じような考え方です。
税金との関係
信託財産になっている間は、受益者に課税されます。
受益権が動いたときに動いた原因によって課税される税金の種類が決まります。
受益権が贈与で動けば、贈与税が課税され、
受益者の死亡が原因で受益権が動けば、相続税が課税されるというわけです。
信託財産の時に課税される受益者と帰属権利者が違う人になると、権利を持っている人が変わるので、「みなし贈与・みなし相続」となり、贈与税や相続税がかかるので、気をつけなければなりません。
まとめ
残余財産帰属権利者の指定は、信託契約の締結時にしっかりと考えておくべき重要なポイントです。
信託が終了した後の財産の行き先を明確にしておくことで、家族間のトラブルを防ぎ、スムーズな財産承継が可能になります。
また、税務上の扱いにも注意が必要であり、みなし贈与やみなし相続とならないよう、契約設計には慎重さが求められます。
信託の目的を果たし、家族の安心を守るためにも、残余財産帰属権利者の指定は、専門家と相談しながら丁寧に進めていきましょう。
