ペットは私たちに癒しと喜びを与えてくれる、かけがえのない存在です。しかし、飼い主様に万が一のことがあった場合、ペットの生活はどうなるのでしょうか?
大切な家族であるペットの未来を守るために、法的な備えをしておくことはとても大切です。当事務所では、以下の4つの方法を通じて、飼い主様の想いを形にするお手伝いをしています。

ペット信託  ※「ペット信託®」は、よつばグループ(協同組合親愛トラスト)の登録商標です。

「ペット信託」とは、飼い主に万が一のことがあった場合でも愛するペットが安心して暮らせる環境を継続的に守る仕組みです。
ペットに財産を遺すのではなく、ペットのために財産を使ってくれる信頼できる人や団体に財産を託し、その財産を使ってペットの生活費や医療費をまかないます。
飼い主様が長期入院したり、認知症になったりしてペットのお世話ができなくなっても、ペットの生活を守ることができる安心の仕組みです。

ペットのための信託契約の場合は、飼い主さんが信頼できる人と信託契約を交わし、「ペットの幸せな生活を守ることを目的として、飼い主さんに万が一のことがあった時に備えて、飼い主さんの財産を管理し、その時が訪れたらペットを飼育してくれる人や施設に飼育費を支払う」ということを託すものです。

万が一のことがあった時」は、死亡した時だけでなく、長期の入院や認知症、施設への入居などで飼えなくなった時も当てはまります。

また、信託監督人を設定することでペットのお世話が適切にされているか、飼育費の支払いがキチンとされているか、見守ることができます。

ペット信託のポイント
  • 生前に契約を締結
  • 飼い主様の生存中から効力が発生
  • 飼育者と監督者(信託監督人)を分けることで安心の二重チェック

負担付遺贈

「遺贈」とは、被相続人の遺言に従い、遺言書に指定された人に遺産を渡すことです。
「負担付遺贈」とは、財産を渡すことを条件に特定の義務(ペットの世話など)を課す遺贈のことです。
遺言だけで成立するため手軽ですが、一方的な意思表示となるため相手が拒否する可能性があります。

負担付遺贈のポイント
  • 遺言書によって指定
  • 飼い主様の死後に効力が発生
  • 柔軟な内容設定が可能ですが、履行の確実性はやや低め

負担付死因贈与契約

「負担付死因贈与契約」とは、負担付死因贈与する人(飼い主)と、贈与を受ける人(ペットの世話を引き受ける人)との合意内容を契約で交わすことです。

新しい飼い主様(贈与を受ける人・受贈者)にペットのお世話をすること(義務)を課して、その世話をすることにより、飼い主様(贈与者)が死亡したときに新しい飼い主様(贈与を受ける人・受贈者)が遺産を受け取ることができる仕組みです。
飼い主様と、新しい飼い主様との合意内容(お世話内容と贈与内容)をあらかじめ契約しておきます。
新しい飼い主様は親族のみならず、老犬ホームや友人などを指定することも可能です。
双方合意の元に契約されるので、新しい飼い主はペットのお世話を放棄することが出来ないのが、負担付死因贈与の特徴です。

負担付死因贈与契約のポイント
  • ペットの世話を条件に財産を贈与
  • 飼い主様の死後に効力が発生
  • 契約内容にペットの生活環境や医療方針も明記可能

死後事務委任契約

「死後事務委任契約」は、亡くなった後に必要となる手続きを信頼できる人に任せるための契約です。一般的には、遺品の整理相続の手続き葬儀の手配などが含まれますが、ペットの世話もこの契約に含めることができます。飼い主が亡くなった後も、ペットが安心して暮らせるようにするためには、契約書の中でペットの世話について具体的に記載しておくことが重要です。

まず、ペットの世話を任せたい相手を明確にしておく必要があります。親族や友人、あるいはペットシッター業者など、信頼できる人を選び、その人がペットの世話を引き受けることを契約書に記します。ただし、受任者が必ずしもペットを引き取れるとは限らないため、事前にその意思や生活環境を確認しておくことが望ましいです。

報酬が発生する場合もありますが、基本的には「事務処理の委任」が目的です。

死後事務委任契約のポイント
  • 頼れる家族や親族がいても、全員が高齢で死後の手続きを任せるのが不安な場合、死後事務委任契約を締結すると安心
  • おひとりさまに有効
  • 飼い主様の死後に効力が発生

法的手段の比較

仕組みの種類概要契約の性質効力発生のタイミングメリットデメリット
ペット信託飼い主が信頼できる人などに財産をたくし、ペットの世話を専門家などに託す生前契約(信託契約)飼い主の生存中から可能・飼い主が入院・認知症でも対応可能
(但し、信託契約は認知症発症前に締結する必要あり)
・信託監督人による監視が可能
・生前からの対策のため、信託のための専用口座にペットのための費用を確保しておく必要がある
・信頼できる受託者が必要
負担付遺贈遺言でペットの世話を条件に財産を贈与遺言による一方的意思表示飼い主の死亡後・遺言だけで成立
・柔軟な内容設定が可能
・受遺者が拒否できる
・履行確実性が低い
負担付死因贈与契約ペットの世話を条件に、死後に財産を贈与生前契約(双方合意)飼い主の死亡後・契約なので履行確実性が高い
・拒否されにくい
・契約書作成が必要
・相手との事前合意が必要
死後事務委任契約死後のペットの世話などを第三者に委任生前契約(委任契約)飼い主の死亡後・契約内容が自由
・信頼できる人に託せる
・法的拘束力が弱い場合もある
・履行は相手の善意に依存